カギを無くして玄関前で待機中

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子どもの頃、家のカギを持たずに遊びに出掛けて、いざ帰ってみると母親が仕事にいってしまっていたため家に入れなくなってしまったことがありました。仕方がないのでずっと親の帰りを玄関も前で待っていたのですが、その時間がとても長く感じられ、不安でしかたなかったのをよく覚えています。
その「待機」している時間に、気を紛らわすためにやっていたのは、なぜか紙に迷路を書いて遊ぶことでした。当時貧乏だったわたしにとって携帯ゲーム機などまったく縁のないものだったのです。

最初はただの迷路だったのですが、そのうちに行き止まりに怪物がいたり、落とし穴があったり、恐ろしい罠や不思議な仕掛けがあるものへと変わっていきました。いま、大人になったわたしがゲームクリエイターとして仕事をしているのも、案外あの玄関の前で「待機」していた時代の影響が大きいのかもしれません。
ほかにもわたしはなぜかカギと縁があるようで、小学生のころには逆の立場になったことがあります。当時は寄り道なんか当たり前のことでしたから、学校の帰り道にわざと知らない道を通って帰ったりしていました。

ある日古いアパートの前を通りかかったとき、玄関の前に「待機」している子どもと目が合いました。なにかの波長を感じたのでしょうか、その子はそのあとわたしの後に付いてきてしまったのです。しばらくは無視していたのですが、いいかげん困って家に帰るように言ったのですが「母親が帰ってこないから家に入れない」と言うのです。その話を聞いたとき、自分と全く同じ境遇の子どもに、妙な親近感が沸いてきました。そこでその子にどうしたいのかと聞くと「お母さんのところに行きたい。場所は分かるから連れて行ってくれ」というのです。
結局2時間ほど歩いて、その子の母親の職場まで連れて行きました。母親がとても驚いていたのを良く覚えています。もし今同じことをしたなら、誘拐の罪で捕まるかもしれませんね。